国立能楽堂2月定例公演を観る 能「昭君」、狂言「文山賊」

公演の前にプレトークがありました。「中国から日本へ、転変する王昭君の物語」として、
橋本麻里さん(ライター・公益財団法人永青文庫副館長)の話でした。絵画と能の関わりです。王昭君の絵もいろいろありますが、現在東京国立近代美術館にある菱田春草の『王昭君』(1902年)は、「いかに描くか」に焦点化したもので、美女王昭君の高潔さと後ろの無個性な女性群の対比が見事なものです。

続けて、狂言「文山賊 (ふみやまだち)」(和泉流)です。15分くらいの作品です。
2人の山賊が登場。旅人を追いかけますが、「やれ、やれ」と言ったのが逃がしてやれと勘違いしたことから仲違い。果たし合いに。死んだら誰にも知られないと、書き置きを残していくうちに妻子のことを考え、泣き出してしまいます。言葉遊びが楽しい作品です。

シテ/山賊:三宅近成、アド/山賊:三宅右矩

休憩後、いよいよ「能 昭君 (しょうくん)」(観世流)です。75分くらいの能です。
古い能で、世阿弥以前の金春権守の作と伝えられています。
国の外交のために、賄賂を使わずに胡国の王に送られてしまった美人の王昭君の話からきていたものを、かなり脚色した異色な作品です。前場では、柳と鏡を象徴に使い、今は亡き娘の昭君を悼む老夫婦が登場。後場では、鬼神と化した胡国王の呼韓邪単于が登場し、昭君の亡霊をも表現するという能になっています。なかなか難しい設定ながら、老夫妻の渋い面と鬼の面などが趣があり、子方はけっこう大きい子で派手な朱色の装束も美しいなど、全体の雰囲気が楽しめる能でした。

前シテ/白桃・後シテ/呼韓邪単于:寺井 榮、ツレ/王母:坂井音隆、
子方/昭君:清水義久、ワキ/里人:髙井松男、アイ/所の者:髙澤祐介

能「昭君」で使用した面
能「昭君」で使用した面

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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