国立能楽堂12月公演 能「代主」、能「巻絹」など

12月は、連続して能の鑑賞に行ってきましたので、あわせて記載します。今年最後の記事になるかと思います。

[12月定例公演] 
今回は、上演が稀な作品の組み合わせです。狂言は稀、能はきわめて稀で、後者は国立能楽堂では初めての上演ということでした。そこにひかれて行ってきました。
狂言 樽聟 (たるむこ)  高野 和憲(和泉流)30分
能  代主 (しろぬし) 井上 裕久(観世流) 90分

まずは、狂言
使用人を持たない聟が舅宅へ聟入りに訪れたとき、知人に頼んで一緒に行った酒樽を持った供の男のほうがりっぱな姿で、太郎冠者が取り違えてしまい、本物の聟を一向に信用しません。間違えの楽しさを描いた狂言です。表情、仕草のやりとりがしっかりしていて面白い作品でした。国立能楽堂でも、1983年の開場以来主催公演としては2度目の登場ということでした。

シテ/聟:高野和憲、アド/舅:石田幸雄、小アド/太郎冠者:中村修一、
小アド/何某:野村萬斎

そして、
大和・葛城山を参詣した京の都・賀茂明神の神職の前に老人が現れ、葛城の賀茂明神について語ります。老人は、我こそが事代主の神と明かして消えて、後半は神霊の姿で出現します。事代の神は颯爽と舞を舞い、泰平の世を寿ぎます。元気な能で、ワキやワキツレのしっかりとした足さばきや声、そして舞も激しく、そして渋く楽しい作品でした。地謡もしっかりしていました。稀な曲として知られ、国立能楽堂では初めての上演ということです。

前シテ/尉、後シテ/事代主神:井上裕久、ツレ/男:浦部幸裕、
ワキ/賀茂神職:原 大、ワキツレ/従者:原 陸、ワキツレ/従者:久馬治彦、
アイ/里人:深田博治

[12月普及公演]
普及公演は、上演前に、解説が入ります。
解説・能楽あんない 「熊野の神々と狂い」 林 望(作家) 25分
狂言 伯母ヶ酒 (おばがさけ)  大藏彌太郎(大蔵流) 30分
能  巻絹 (まきぎぬ) 佐野 由於(宝生流) 65分

能の解説では、作者不詳の巻絹は、筋書きでなく芸能としての面白さがあると伝えていました。舞台の熊野は京から300km離れ、わけがわからないものがいるパワーポイントでもあったとのこと。また巫女が烏帽子を被っているのは、女だけど天神が憑依している(シャーマニズム)からとのことでした。

まずは、狂言。登場人物は2人のみ。
酒を造り、酒屋を営んでいる伯母はけちで甥にさえ酒を飲ませてくれません。甥は鬼になりすまし酒を脅し取ろうとしますが、酒を得た蔵で酔っ払い寝てしまいます。そこを伯母に見つかって・・・。シンプルでわかりやすく、鬼の面を膝に掛けたり効果的に使っていました。仕草や動作が小気味よい作品です。

シテ/甥:大藏彌太郎、アド/伯母:禅竹隆司

続いてです。
熊野権現巻絹を献上する途中、男は音無天神の梅に心を奪われ和歌を一首詠んでいたために遅れ、臣下により罪として縛られてしまいます。そこに音無天神が憑いた巫女が現れ、和歌の徳を讃えて、狂乱のうち舞います。その後、正気を取り戻します。中入りもなく、全体として静かな能です。舞もそれほど激しくないです。扇子で憑依から平静を取り戻すことを表現しているようでした。

シテ/巫女:佐野由於、ツレ/都の者:小倉伸二郎、ワキ/帝の臣下:村山 弘、
アイ/従者:禅竹隆平

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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