能を観る2 「紅葉狩」と狂言「柿山伏」

国立能楽堂「外国人のための能楽鑑賞教室」に、外国人でないけど行ってきました。今は、在住の方はともかく、旅行で訪れている人はまずいないでしょうから、よいですよね。演目が魅力的そうだったので、チケットをとってみました。狂言「柿山伏」(大蔵流)能「紅葉狩 鬼揃」(観世流)です。当日は、やはり外国人は数えるほどしか見かけませんでしたが、時々英語、ドイツ語、フランス語などが聞こえてきました。席は今回も、脇正面にしました。

国立能楽堂入り口
国立能楽堂入り口
外国人のための能楽鑑賞教室
外国人のための能楽鑑賞教室

まず、観世流・伶似野(レイヤー)陽子さんによる英語での解説がありました。英語がとてもはっきりわかりやすく、ところどころユーモアや身振りなどもまじえ、能楽、能楽堂等についての知識も含めた説明は日本人にも発見があったと思います。字幕システムでは、ほかに中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、もちろん日本語も対応とのことです。

国立能楽堂字幕システム
国立能楽堂字幕システム

すぐに続けて。狂言「柿山伏」です。舞台の前方端の方には葛桶の小道具が置かれ、ここが柿の木の上を表すものになります。
あらすじですが、羽黒山で修行をしたばかりの山伏が、故郷に帰る途中で喉が渇いたところを、木の上の柿を見つけ無断で食べ始めました。それを柿の木の持ち主に見つかったところを、カラスか猿か、鳶かとからかわれ鳴き声をまねる羽目に。それからとして飛ぶことになりましたが、落ちて体を痛めてしまいます。介抱を要求する山伏と逃げようとする柿の木畑の持ち主。山伏の呪文で逃げられなくなり、一度は背中におぶりますがすきを見てまた逃げ出す、というようなお話です。本来尊敬されるべき山伏をからかう畑主と、のせられて動物の鳴きまねをいろいろ行う羽目になった2人の掛け合いと仕草が楽しい狂言でした。

シテ:山伏/大蔵教義、アド:畑主/大蔵基誠

文化デジタルライブラリーのサイトに、演目の一部映像も紹介されています。

国立能楽堂 舞台と橋掛り、揚幕が見える
国立能楽堂 舞台と橋掛り、揚幕が見える

休憩後は、「紅葉狩 鬼揃」ですが、タイトルの「紅葉狩」以外に、小書(こがき)に「鬼揃」とついているのは、特殊な演出ということで、今回はシテ側の鬼が6人?も揃うというとても賑やかな舞台です。私は、シテツレに限らずこんなに舞台上に人がそろうのは初めて見ました。もともと地謡が8人、囃子が4人いて、さらにワキとワキツレで4人、あとアイで2人、後見で3人ほどいることになります。やはり外国人向けにねらった演出を選んだのか豪華な舞台でした。
あらすじですが、前場ではシテ側が先に登場します。戸隠山で多勢の侍女をつれた女が紅葉狩の宴を行っているところに、武勇で名高い平維茂(たいらのこれもち)が通りかかります。この世のものとは思えない美しい女たち。誘われて酒宴をともにしますが、これは女たちの策略で寝込んでしまいます。目を覚まさないようにと企てられますが、夢の中八幡宮武内の神が現れ、剣を渡され目を覚まします。
後場では、その剣を使って、正体を現した鬼たちと激しい戦いを交え、結果勝利を得ます

能「紅葉狩」は観世小次郎信光の作品です。世阿弥、観世元雅などの幽玄というよりは、スペクタクル性が強調されているようです。前場では女6人が揃い華やか。そこに維茂が加わった様は見事です。また後場では一転して、恐ろしいシーン。動きは緩やかですが、激しいシーンです本舞台に3人?の鬼、橋掛りに3人?の鬼が並ぶ設定は見応えがありました。確かにちょっとびっくりで、終演後聞こえてきた声に、「あの鬼たちは何?、クローンかしら」などという感想もありました。現代でも通じますね。

舞台上後方には、「作り物」として、布を巻いた一面の紅葉を表す「山(骨組み)」が置かれ、前場で消え去るシテこの中で、後場での鬼に変身するのも斬新でした。装束も赤(オレンジ)色でとても艶やかでした。紅葉の季節が持ち遠しいです。いろんな発見があった舞台でした。

前シテ/女・後シテ/鬼:梅若紀彰、ツレ/侍女・鬼:角当直隆、佐久間次郎ほか、ワキ/平維茂:舘田善博、ワキツレ/従者:森常好、ほか、アイ/供女:茂山忠三郎、アイ/武内の神:大蔵吉次郎

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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