ラトマンスキー振付、ボリショイ・バレエを観る

日本の劇場は、気をつけながら再開していますが、海外の来日公演はまだまだ観ることができません。そんなところに、渋谷のBUNKAMURA ル・シネマで、映像ですがロシアのボリショイ・バレエが3週間に限り上演されると知り、行ってきました。

ル・シネマ
ル・シネマ

この度の関心は、ラトマンスキーの新制作を含む振付ということに興味がありました。そして、次には「物語バレエ」(ドラマチックバレエともいう)が久しぶりに観たい、さらにプロコフィエフの音楽が聴きたいと思ったことです。いくつかある作品で、2つ選んだのが新作2020年「ジゼル」と2011年振付?(今回の公開収録は2018年)の「ロミオとジュリエット」でした。

「ボリショイ・バレエ in シネマ」ちらし1
「ボリショイ・バレエ in シネマ」ちらし1
「ボリショイ・バレエ in シネマ」ちらし2
「ボリショイ・バレエ in シネマ」ちらし2

アレクセイ・ラトマンスキーは、バレエダンサーとしてのキャリアを経て、1990年代後半くらいから振付でも著名になってきました。またボリショイ劇場では、2004年から34歳での若くしてのバレエ芸術監督も務めていました。

私が初めに関心を持ったのは、2003年のマリインスキー・バレエ(当時はキーロフ・バレエと呼ばれていた)の来日で、彼の振付によるプロコフィエフ「シンデレラ」(2002年振付作品)を観たことがきっかけです。この作品は、シンデレラ役はディアナ・ヴィシニョーワ、王子役はアンドレイ・メルクーリエフ、シンデレラの2人の義姉とも女性が演じていました。衣装・舞台・振付が現代的で、いたずらにコミカルさを強調しないこの作品は、ヴィシニョーワの素晴らしさもひきたち、私はとても気に入りましたが、その頃の評判は賛否両方あるようでした。

マリインスキー劇場
マリインスキー劇場

さて、今回の「映画」での上演です。METのライブビューイングはもちろん知っていましたし、ほか英国ロイヤルバレエ、パリオペラ座バレエなどは数回くらいは「映像」の形で観たことがありましたが、ロシア・ボリショイ・バレエは今回初めて知りました。しかし、映像内でも紹介がありましたが、今や10周年らしいです。METライブビューイングに比べると、スクリーンも小さめで、正直映像の撮り方含めてやや洗練されていないというか垢抜けない感じはありました。インタビューする人がロシア語、フランス語、英語3つの言語を駆使して話していたのは印象的でした。しかし内容は、やはり素晴らしいですね。身体的能力と技術が卓越しているところ、手足が長く何しろ姿が美しいこと、個々、加えて集団のパフォーマンスは最高でした。さすがバレエ大国のロシアで、かつマリインスキー劇場とともに2大バレエ劇場のボリショイのことはあります。

ボリショイ劇場 車窓から
ボリショイ劇場 車窓から

アダン作曲「ジゼル」は、いわゆるロマンティックバレエの代表ですが、ラトマンスキーは動きも細かく、ダイナミックかつ緻密に組み立てているようでした。本人のインタビューもありましたが、一部想像で行った部分はありますが、史実・史料に忠実に組み立てていることを強調していました。女性は軽やか、男性はダイナミックな印象が強かったです。村人の群舞なども素敵でした。やはり、ジゼルのオルガ・スミルノワ、アルブレヒトのアルテミー・ベリャコフの魅力満載でした。ウィリの象徴的な十字架形配置は印象的でしたが、ジゼルが飛んだり、墓から出てくるなどはやややり過ぎ感はあったものの、丁寧なつくりでとてもリアルなものになっていました。

プロコフィエフ作曲「ロメオとジュリエット」はやはり音楽が素晴らしいです。ジュリエットのエカテリーナ・クリサノワの可憐さも光りました。ロメオはウラディスラフ・ラントラートフ、素敵でした。「ロメオとジュリエット」は、いろんな振付家による多様さが際立つものですが、やはり代表であるマクミラン版が有名であり、優れていますね。私も過去、マクミラン版以外にラブロフスキー版、クランコ版、ノイマイヤー版、ボヤルチコフ版などを観ていると思いますが、いろんな振付を見比べるのも、楽しみのひとつです。観点は、例えば①有名な音楽が流れる中での舞踏会の振付、②バルコニーの場の表し方、③最後の2人のすれ違いでの死のシーンをどう扱うかなどが、特に気になります。ラトマンスキー版では、①剣を合わせるシーンとして、②高低差をあまり利用せず、③死体を踊りでは使わなかった、と見ました。やや私は物足りなかったですかね。

スミルノワの「白鳥の湖」も観てみたかったですが、今回はがまんしました。次は観たいですね。

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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