オペラ 「夏の夜の夢」を観る

新国立劇場(新宿初台)のオペラが再開しました。この劇場での「オペラ」については2月の公演以来ということです。すでに、2020/2021シーズンの季節に入っています。待ちに待った再開といえます。今回オープンした演目は、ブリテン作曲「夏の夜の夢」(英語作品)です。このシェークスピア原作の喜劇は、演劇、映画、バレエなどで演じられていますが、音楽・オペラでも制作の試みがありました。メンデルスゾーンによる曲の方が有名かもしれませんが、オペラとしてはこのブリテンの3幕ものがあります。イギリス人のブリテン(1913-1976年)のオペラとしては、「ピーター・グライムズ」や「ねじの回転」のほうがポピュラーかもしれません。

新国立劇場オペラパレス(大劇場)
新国立劇場オペラパレス(大劇場)
ベンジャミン・ブリテン作曲「オペラ 夏の夜の夢」
ベンジャミン・ブリテン作曲「オペラ 夏の夜の夢」

今回はこの作品を、初めに予定していたマクヴィカー演出(もともと2004年にモネ劇場つまりベルギー王立歌劇場で初演)を「そのコンセプトを踏襲しながら感染防止策を講じた”ニューノーマル時代の新演出版”に変更して上演しました」(新国立劇場Webより)ということです。つまり非接触を基本とするやり方です。指揮者・出演者もすべて日本人となりました。特に今回出演者で話題になっていたのは、藤木大地。東京藝術大学卒業、新国立劇場研修生を経た後、途中でテノールからカウンターテナーに転向。ボローニャ歌劇場、ウィーン国立歌劇場などの世界の舞台でもデビューした実力者です。舞台では、やはり存在感がありました。歌声はやさしく、やわらかいながらぐいぐいと舞台を引っ張って進めていきます。

出演者・関係者の努力が実を結び、よい作品に仕上がっていました。グループとして妖精たちと男・女たちと職人たちという3つに整理して見ていくとわかりやすい、というのも納得です。子どもの歌声もすてきでした。私は、第3幕の初めあたり男女・恋人たち、職人たちがそれぞれ生き生きと歌い出すところが気に入りました。

全体として見ると、シェイクスピアの原作への理解や、1960年に制作された「現代オペラ」であるというところから、難解ともいえました。オペラの再開を待って座席を埋め、声を出せないので静かに観て拍手を送る観客ですが、ときどき寝息ももれ聞こえていました。そうこれは、夢の作品ですから、いいんです。現実の世界も、どこまでが夢・幻・虚構でどこまでがうつつ・リアル・真実とも必ずしも明確に判別できないとみることができます。心の中で「ブラヴィー」と声をあげながら、最後に出演者・関係者の概略を記録しておきます。

指揮:飯森範親
演出・ムーヴメント:レア・ハウスマン(デイヴィッド・マクヴィカーの演出に基づく)
美術・衣裳:レイ・スミス
美術・衣裳補:ウィリアム・フリッカー 
照 明:ベン・ピッカースギル(ポール・コンスタブルによるオリジナルデザインに基づく)
児童合唱: TOKYO FM少年合唱団
管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団
オペラ劇場芸術監督:大野和士

オーベロン :藤木大地
タイターニア :平井香織
パック :河野鉄平
シーシアス :大塚博章
ヒポリタ :小林由佳
ライサンダー :村上公太
ディミートリアス :近藤圭
ハーミア :但馬由香
ヘレナ :大隅智佳子
ボトム :高橋正尚
クインス :妻屋秀和
フルート : 岸浪愛学
スナッグ: 志村文彦
スナウト: 青地英幸
スターヴリング: 吉川健一

オペラパレス内部 ブッフェも中止でさみしい
オペラパレス内部 ブッフェも中止でさみしい
オペラパレス内部 舞台と客席
オペラパレス内部 舞台と客席

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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