群馬県立館林美術館「佐藤忠良展」を観る 館林駅周辺も

先日、東武鉄道の特急りょうもうに乗って館林まで行ってきました。目的は、群馬県立館林美術館で行われている彫刻などの作品の「佐藤忠良(ちゅうりょう)展」を観ることです。この美術館も館林も初めての訪問でした。彫刻作品を中心に観るのも美術館ではあまり機会がないことでした。
暑いさなか歩くのはしんどいので、近くまで行く循環バスがあると知り調べましたが、本数がかなり少ないようでした。帰りはタクシーかなと考えましたが、効率的に回ろうと思いました。館林に着いて西口に降り、少ししたら発車する循環バスとは、何と海外にはよくあるような乗り合い自動車でした。客は美術館まで行く人が5人、地元の人が2人といった状況でした。200円。現金のみです。

しばらくして美術館のすぐ近くで降車。念のため帰りの乗車時刻を確認しておきました。2時間半くらいの滞在だな、と。ここは、多々良沼公園の一角にあるなかなか素敵な場所でした。建物も素晴らしいですね。水辺のハスを見てから館内に入りました。そう、その前に宇都宮美術館のまわりの公園でも出会ったような生き生きとしたウサギの彫刻の姿も目に入りました。これは、英国のバリー・フラナガン(1941-2009年)作『鐘の上の野兎』1983年、です。館内は、展示室は別館を除いて写真撮影不可でした。佐藤忠良特別展の他には、別館の「彫刻家のアトリエ」、そして彫刻のコレクション展示の部屋がありました。

今回の特別展は、正確には『生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良』といいます。宮城県に生まれ、北海道で過ごし、杉並区の永福で亡くなった佐藤忠良(1912-2011年)はもちろん彫刻で有名ですが、この展覧会は3つの代表作に焦点を当てて、その姿を追ったものです。展示構成も、Ⅰ<群馬の人>フランス近代彫刻から学んだもの、Ⅱ<帽子・夏>イタリア近代彫刻への共感と空間の探求、Ⅲ<おおきなかぶ>画家・佐藤忠良の足跡、から成っていました。コンセプトの詳しいことは美術館のサイトを見てください。多くの展示作品は、宮城県美術館からのものです。

私は、東京国立近代美術館にも展示されている『群馬の人』が日本彫刻史上でそれほど意味があるものとは知りませんでした。Ⅰのなかでは、その『群馬の人』以外には、技法材質がブロンズでない、セメントの『常磐の大工』に関心を持ちました。Ⅱでは、興味深いものが多かったですが、『ボタン(大)』、『若い女・夏』、『帽子・立像』や技法材質がポリエステル樹脂の『カンカン帽』などが気に入りました。またイタリアのエミリオ・グレコ(1913-1995年)の『うずくまる女 No.2』なども素敵でした。Ⅲでは、『おおきなかぶ』などの生き生きとした原画がよいですね。特に表裏表紙。また『おおきなかぶ ブロンズレリーフ』も気に入りました。

そのあとは、別館の「彫刻家のアトリエ」に行きました。館林美術館は、動物の彫刻等で名が知れたフランスのフランソワ・ポンポン(1855-1933年)のコレクションを持っていて、この別館の展示室はポンポンのアトリエを再構成したものです。建物も含め自然とマッチした素敵な場所でした。
そして、彫刻のコレクション展示へ。ここには佐藤忠良の『男の顔』が1点、ポンポンが小さい『シロクマ』含めて4点、バリー・フラナガンの小さい『仔象』、他にもボテロの『馬』、ロッカクアヤコの『無題』等々…とても興味深いものがありました。

帰りの時間まで、中途半端になってしまい、素敵なレストランでの食事(ワッフルや地元の大麦を生かしたパスタなどが売りのようでしたが)は諦め、ドリンクだけ注文し、そそくさと帰路につきました。
駅に着き、行きに気になっていた駅すぐのところの「製粉ミュージアム」に入りました。何とここは日清製粉のおおもとなのでした。1900年から1901年(明治34年)にかけてこの地で「館林製粉株式会社」として会社や工場を興したようです。今も近くには工場もあります。また行きませんでしたが、1873年(明治6年)に始まった正田醤油の関連施設などもあり、ここらは明治時代からの産業でも盛んな地であったようです。今は自転車駐輪場になっている建物の上に残っている看板もその名残でしょうか?

ということで長い時間ではなかったですが、濃密な日を過ごしました。

追加 彫刻につきましては、現在、彫るだけのものではないことから彫塑という言い方もありましたが、あまり一般的な用語とはいえません。ここらは、今の見方を堀越 啓さんが、著書『西洋美術は「彫刻」抜きには語れない』翔泳社 2022年4月発行 にてわかりやすくまとめて表現していますので紹介します。

「彫刻とは、石、木、鉄、ブロンズ、土、石膏、銅などといった伝統的な素材に加え、FRPやその他の多様な素材を使い、彫ったり、刻んだり、鋳造したり、組み立てたりといった行為や方法を通じて制作される、3次元の立体美術作品。」(p.32)

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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