新国立劇場オペラ『ペレアスとメリザンド』を観る

新国立劇場2021/2022シーズンを締めくくる新制作オペラ『ペレアスとメリザンド』が開幕し、終了しました。原作はというと、ベルギーの象徴派の詩人・劇作家の(童話劇『青い鳥』で有名な)モーリス・メーテルリンクによるもので、作曲はフランスの作曲家であるクロード・アシル・ドビュッシーです。1902年に初演されました。
また、今回の演出については、エクサンプロヴァンス音楽祭、ポーランド国立歌劇場との共同制作によるケイティ・ミッチェル演出のプロダクションによるものでした。音楽、作品についてはまったく知らないこともあり、先入観なく劇場に行ってきました。

私が観たのは、2日目で、事情によりイニョルド役のキャストの交代があり、演出の都合によるものかイニョルドが歌わないシーンの一部で、演出助手の一人が姿だけ演じた(黙役)ようでした。複雑ですね。約3時間25分(第1部105分 休憩30分 第2部70分)

指 揮:大野和士、演 出:ケイティ・ミッチェル、美 術:リジー・クラッチャン、
衣 裳:クロエ・ランフォード、照 明:ジェイムズ・ファーンコム、
振 付:ジョセフ・アルフォード、演出補:ジル・リコ、舞台監督:髙橋尚史、
合唱指揮:冨平恭平、合 唱:新国立劇場合唱団、
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【キャスト】
ペレアス:ベルナール・リヒター、メリザンド:カレン・ヴルシュ、
ゴロー:ロラン・ナウリ、アルケル:妻屋秀和、ジュヌヴィエーヴ:浜田理恵、
イニョルド:前川依子、医師:河野鉄平
メリザンドの分身(黙役):安藤愛恵、メイド(黙役):高橋伶奈、中島小雪

内容です。筋としては、森の泉で出会った正体不明の不思議な女性メリザンドをゴローが城に連れ帰り、そのことが家族に影響を与え、特に弟ペレアスとの禁断の恋があり、哀しい結末へといったような物語です。
前奏曲もなく舞台が始まり、舞台自体は終始ステージ上に作られた左右不均等の2つの「箱」?の中で進められていきました。両方使ったり、片方ごとに連続して進められたりです。とにかく動きが多いものでした。
歌われる歌は時代は不明ながら、王や王子や城、狩りをする話などが出てくる古い時代を想定していますが、この演出は姿、衣装など、現代に置き換えています。
演奏はとても抒情的な音楽で進んでいくのですが、アリアなどのまとまりがないようです。つまり音楽は舞台の背景に溶け込んで進んでいくようで、これが象徴派の音楽なのか、作品なのかと思いました。
また演出がとても印象的! 何なのだろうこれは。奇妙な女性のメリザンドによって筋が動き、登場人物すべてが影響を受けるのですが、その歌手のメリザンドとは別にメリザンド役の俳優が舞台にいて、同時に登場しているのです。演出の核心が「物語は実はメリザンドが見ている夢の中で起きている」というところから、このような方法をとっているのです。夢に現れる多元的な構造、またピカソなどキュービズムの絵画なども想像してしまいました。

と書きつつ、理解はまだ浅いと思います。原作、音楽、演出などをそれぞれさらに解読してみたいものです。登場人物は少ないのですが、適格な歌を紡ぐ歌手陣と、黙役としての俳優陣もとても印象的でした。

雰囲気はこちら。

新国立劇場オペラ『ペレアスとメリザンド』予告映像 (2016年エクサンプロヴァンス音楽祭公演より)

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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