能「鉄輪」 安倍晴明生誕千百年

今年は、平安時代の陰陽師である、安倍晴明生誕1100年に当たる年ということです。生没年は、延喜21年1月11日(西暦921年2月21日)~寛弘2年9月26日(1005年10月31日)で、生誕地は現在の奈良県桜井市安倍、または大阪市阿倍野区などとされています。あまり幼少からの確かな記録がないようです。

この、現在では多くの人が少なくとも名前だけは知っている「安倍晴明」に関わる能と解説が、国立能楽堂で7月に行われましたので、それについて書きます。スケジュールは以下の通りでした。

解説「安倍晴明の虚実をめぐって」小松和彦(国際日本文化研究センター名誉教授)
約30分
説経節「葛の葉」若松若太夫 30分
能「鉄輪」関根知孝ほか(観世流)70分

国立能楽堂の舞台
国立能楽堂の舞台

小松和彦先生は、文化人類学・民俗学の方法で妖怪、民間信仰、口承文芸などを研究されてきました。解説によると、晴明はあまり出自が分からない中で、決して若くはない40歳から85歳までの年齢で頭角を現した人物ということです。今でいう公務員ですが、優秀な人物だったということです。伝説として後世になって伝わるようになったことが多く、現代まで4回くらいのブームがあったようです。直近はコミックなどでのイケメンイメージでしょうか。夢枕獏原作の『陰陽師』が滝田洋二郎監督、野村萬斎主演で映画化されたこともありましたが、現実はおじさんですね。その頃の時代では長く生き抜いた人です。陰陽道天文、占術、呪術、暦などを包含するようなものです。

続いて、説経節です。説経節は、古く仏説を説くことから起こり、江戸期には三味線を伴奏に盛んになった芸能が、義太夫節に押されてその後衰退、江戸末期に復活して、初代若松若太夫が改良したもので、現在三代目です。私は初めての経験かもしれません。

安倍保名に命を助けられた白狐葛の葉という名の女に化け、保名との間に子(晴明)ができますが、そこに本当の葛の葉が現れます。子は乳を求め、父母とも狐に育ててほしいと願いますが、未練を残しつつ故郷・信太の森へと帰って行くのです。晴明の生誕にまつわる物語を語ったものです。

そして、いよいよ能「鉄輪」です。自分を捨てて新しく妻を迎えた夫への恨み、女は貴船神社へ丑の刻詣りを重ねます。鉄輪の三本の足に火を灯して頭につけとなった女が、後妻と男を呪い殺そうとします。身代わりの人形をつくって祈る晴明との対決です。後妻に手をかけた後、神々が出現し何とか男は助かり、女は姿を消します。

前シテ/女、後シテ/女の生霊:関根知孝、ワキ/安倍晴明:舘田善博、ワキツレ/男:野口能弘、アイ/社人:野村裕基

今回、晴明由来の晴明神社安部文珠院を調べ、ネットで後者の記念限定御朱印を手に入れました。江戸時代から伝わる版木を復刻した御朱印ということです。おまけに参拝証・限定御朱印も送ってくれました。両者ともに入っている朱の「五芒星桔梗印」は、あらゆる魔除けの呪符として使われているとのことです。

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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