能「夕顔」と印刷博物館・源氏物語絵巻でみる「夕顔」

少し前の話ですが、国立能楽堂4月の普及公演「夕顔」(金春流)を観ました。
まず、能楽研究家の小田幸子氏による能「夕顔」の解説がありました。続けて狂言「呂蓮」(和泉流)です。時間は30分くらいでした。
主人は、宿に泊まった僧から「呂蓮坊」と名をもらい、たっての願いから出家しようとします。それを見た妻が怒りだし、僧の責任にしますが・・・。

シテ/出家:野村万作、アド/宿主:石田幸雄、小アド/女:岡 聡史

休憩をはさんで、能「夕顔」(金春流)です。時間は90分くらいでした。源氏物語を題材とする能には、この『夕顔』以外では、『半蔀(はじとみ)』『葵上』『野宮』『須磨源氏』『住吉詣』『玉鬘(たまかずら)』『落葉』『浮船』『源氏供養』『碁』『夢浮橋』などがあり、それほど多くはないようです。
僧が京の五条辺りで会った女は、光源氏と愛された夕顔のことを話します。後にその女が夕顔の幽霊だったことに気づき、夢の中で弔いを頼まれ、僧は霊を成仏させます。夕顔が変死した場所に舞台を設定し、命と恋のはかなさを悲しく寂しく感じさせる能です。この能は金春流では平成30(2018)年に復曲されたものということです。

前シテ/都の女、後シテ/夕顔の上の霊:本田光洋、ワキ/旅僧:飯冨雅介、ワキツレ/従僧:有松遼一、ワキツレ/従僧:岡 充、アイ/所の者:野村萬斎

そしてこの後、印刷博物館での展示源氏物語絵巻「夕顔」が観られるということを聞いていたのですが、その後はずっと休館中。それが解けたときに行ってきました。
企画内容は、「和書ルネサンス 江戸・明治初期の本にみる伝統と革新」ということで、日本で江戸時代から印刷出版が本格化し、古典伝統を継いでいく大事な役割を果たしたところに焦点を当てたものです。その出品のひとつとして、『盛安本 源氏物語絵巻』が含まれていて、石山寺所蔵の「末摘花 上巻」(重要文化財で、中巻・下巻はニューヨーク公共図書館が所蔵しているという)とフランスで近年発見された個人蔵の「夕顔 断簡」を観ることができました。盛安本とは1650年代当時の総合プロデューサー(絵画工房、詞書筆者達、スポンサー等をまとめあげた)である杉原盛安により、代表部分を絵にした他の絵巻と違って、源氏物語全体の絵画化を目指したもので、現在6巻程度しか見つかっていません。54帖すべてが見つかると数百巻にもなるのではないかとされる「幻の源氏物語絵巻」ということです。
今回、「夕顔 断簡」全体として金色に輝く描写のなかに、物の怪に呪殺され寝床に伏せる夕顔の脇に光源氏と侍女が泣き悲しんでいる様子、また周りには従者たちが慌てふためく様子が絵巻として生き生きと表されているもので、長い時間見入ってしまいました。

「夕顔 断簡」の紹介をしているサイトは、こちら

また、石山寺「源氏物語絵巻 末摘花 上巻」を紹介しているサイトは、こちら

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
カテゴリー: シアター, ミュージアム, 文化 パーマリンク