国立能楽堂 6月定例公演 狂言「花盗人」と能「吉野天人」を観る

今月も桜がらみの公演です。能の小書(演出)「○○揃」と書いてあるのに惹かれてこの公演を選びました。多数の面をつけた人が舞台に勢揃いするのは、どちらかというと地味な能としては派手目で、私みたいな素人はつい興味がわいてしまいます。近年でも、「鬼揃」「天狗揃」などを観ています。

まずは、狂言「花盗人(はなぬすびと)」(大蔵流)です。桜の作り物が運ばれ、セットされます。 
子どものためという理屈はあるものの、桜の花を折って持って帰った盗人(僧)が再び現れます。人々は、捕まえてやろうと待ち構えています。捕まえたところ、盗人は漢詩や和歌を口ずさむ教養のある人物でした。そこから風雅なやりとりや酒宴が続きます。しかし、最後はまたも木の枝を持ち帰ってしまうという・・・。風雅と楽しさがある、45分くらいのけっこう長い作品でした。

シテ/三位(責任ある役位の僧):山本東次郎、アド/何某:山本泰太郎、立衆/花見客:山本則重、立衆/花見客:山本則秀、立衆/花見客:山本則俊、立衆/花見客:山本雅一、立衆/花見客:山本凜太郎、立衆/花見客:山本則孝

休憩後、能「吉野天人(よしのてんにん)天人揃(てんにんぞろい)」(観世流)です。こちらの作品は、私が数冊持っている能の案内書にはどれも載っていません。それもそのはず、あまり演じられていないものでした。解説書きを読むと、この作品は、「吉野琴(吉野山)」という観世元雅の作で紀貫之、天武天皇などを想定したドラマ性・政治性を持ったものから、それらを削いだ改作(観世小次郎信光作)にあたるものだそうです。
こちらも桜の作り物がセットされますが、これは後半、天人の舞を確保するためか、しまわれます。
吉野山を訪れた花見の衆のところに美しい女性が現れます。この女性は、吉野の桜に心引かれて舞い下りた天人でした。天人達は満開の桜の中、花に戯れ舞い遊びます。60分あるかないかくらいのけっこうあっさりした作品でしたが、女性、天人の着物がとてもきれいでした。鳳凰天冠、日月冠などのかぶりものもすてきです。

前シテ/女、後シテ/天人:山階彌右衛門、ツレ/天人:武田宗典、ツレ/天人:武田文志、ツレ/天人:林本大、ツレ/天人:武田祥照、ツレ/天人:木月章行、ワキ/都の者:則久英志、ワキツレ/同行者:野口能弘、ワキツレ/同行者:野口琢弘、アイ/里人:山本則孝

吉野の金峰山はもともと山伏修験道の霊地であり、有名な桜ももともと霊花であったようです。吉野山の情報は以下からどうぞ。
吉野山観光協会

ジョージ について

旅行大好き、飲食大好き、劇場、博物館・美術館大好き、好奇心旺盛なごくふつうの会社員です。社会問題含め、いろいろ書いていこうと思います。
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