10月下旬から11月初めにかけて行われたバレエの話です。この作品は、吉田都さんが2020年のバレエ芸術監督就任1年目の新制作第1作になる予定だったのですが、新型コロナ感染症の影響で延期していたものです。第1・2幕70分(休憩25分)、3幕40分(休憩20分)、4幕25分、の予定時間でした。
バレエと言ったら、やはり白鳥の湖と言われるように、バレエの楽しめる要素、技術が満載の作品です。私も、オペラに対して遅かった「バレエデビュー」は、新国立劇場バレエでの「白鳥の湖」プティパ、イワーノフ振付、セルゲーエフ改訂振付版でした。2002年の話です。スヴェトラーナ・ザハロワのオデット/オディール、ダニラ・コルスンツェフのジークフリート王子というものでした。ロシアからの来日キャストです。ザハロワデビューでもありましたね。感動しました。
この作品は、誰でもなじみがある美しい音楽がやはりよいことが一番。そして個人的には私は舞台ものはシェークスピアの「演劇」などから入ったこともあり、どちらかというとオペラもバレエも全体の「作品」として観る好みの傾向がありますので、その点でも「白鳥の湖」は、物語的要素と舞踊的要素がバランスを保っているのもよいと思います。「眠れぬ森の美女」などがあまり好きになれないのは、舞台の筋・設定が踊りを見せるための手段になりすぎていると思うからです。
今まで小野さんのプリンシパルで観ることが多かったのですが、今回は、もうひとり評判のよい米沢さんで観ることにしました。初日での登場でしたし。
米沢さんのオデットはとても繊細な印象と確かなテクニック、黒鳥の妖艶さにはやや欠けるかもしれませんが、インタビューでも「今までこの作品は修行とも思っていたのが、今回楽しい、面白いと感じることができた」などと発言していたように、とても生き生きとしていました。相手の福岡さんは初め少し小さく見えたのですが、ナイーブなジークフリード王子の役ですからそれでよいのですね。友人のベンノの木下さんは生き生きと見えていました。
ピーター・ライト版は演劇的要素が豊富で、美しい舞台でした。最初に王の棺が運ばれるシーンを短いながらもはさむことで人物像をしっかり理解させてくれます。衣装はとてもシックで美しいですが、少し動き・踊りは見づらいような感じでした。群舞も美しく、特に4幕の幕明けが息を飲む美しさでした。クルティザンヌほか、間にある踊りもよかったです。最後は天で結ばれるというハッピーエンド?パターンでした。
席は4階席1番後ろでしたので、東京文化会館とは違って前の人がやや邪魔になり少し観づらいところがありました。また、新国立劇場のバレエは久しぶりだったせいもありますが、よく日本のバレエ団であるような、ファンが多いのか、いちいち登場する度の拍手や、音楽の切れ目まで待てない拍手には、作品全体を観たい私にとっては、少し白けました。
振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト、演出:ピーター・ライト、共同演出:ガリーナ・サムソワ、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、
美術・衣裳:フィリップ・プロウズ、照明:ピーター・タイガン
指揮:ポール・マーフィー、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
オデット/オディール:米沢 唯、ジークフリード王子:福岡雄大、王妃:本島美和、
ロットバルト男爵:貝川鐵夫、ベンノ:木下嘉人、(けがの速水渉悟から交代)
クルティザンヌ(パ・ド・カトル):池田理沙子、飯野萌子(当初の予定の柴山紗帆から交代)
ハンガリー王女:廣田奈々、ポーランド王女:飯野萌子、イタリア王女:奥田花純