もともと「上野の森バレエホリデイ2021」の企画であったものが、新型コロナによる延期で、6月の中旬の時期になりました。東京バレエ団、上野の東京文化会館大ホールでの1回きりの公演でした。
東京文化会館大ホールに入場すると、美しく飾られた空間が私たちを出迎えていました。
皆さん、雰囲気を楽しんだり、記念撮影をしていました。そう、未だホール内は飲食ができませんので、このあしらいはうれしいです。客席の入りは1階席はほとんど埋まっていましたが、上のほうはあるエリアに集中して埋まっていたり、まったく空いていたり、密度が場所によってかなり違います。延期や緊急事態宣言などにより席のキャンセルや変更、また途中から定員50%までの席の販売が実施されたりしたことなどがこのばらつきに現れているのでしょう。
まずは、「スプリング・アンド・フォール」です。ジョン・ノイマイヤーの振付作品。音楽は、アントニン・ドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」の美しい曲を使います。少なめの人数で編成された生のオーケストラもうれしいです。長さは35分くらいでした。。
内容は、総数7人の女性ダンサーと10人の男性ダンサーが登場し、それぞれの場面で軽やかな動きをするモダンダンスです。第1楽章から第5楽章まであり、それぞれダンサーの数が違います。題名には、「春と夏」という季節と、「跳躍と落下」という意味もあるそうです。心地よい動きが印象的な作品でした。
指揮:井田勝大、演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
出演は、沖香菜子、秋元康臣、三雲友里加、二瓶加奈子、工桃子、中川美雪、上田実歩、足立真里亜、池本祥真、岡崎隼也、ブラウリオ・アルバレス、井福俊太郎、樋口祐輝、海田一成、岡﨑司、昂師吏功、後藤健太朗
休憩後は、キューバのアルベルト・アロンソの振付、ジョルジュ・ビゼーの音楽をロディオン・シチェドリンが編曲した、オペラで有名なあの「カルメン」のバレエ版です。
出演は、カルメン:上野水香、ホセ:柄本弾、スカミリオ:宮川新大、ツニガ:鳥海創、運命(牛):政本絵美、と脇を固める14人のキャストです。50分くらいの作品です。
全体として、曲も共通していますし、オペラ「カルメン」をなぞるような形で作品が進行していきます。印象的だったのは、舞台の中央で踊るダンサーを、周りに円形で見下ろすような形で多くの配役が取り囲み、動きを見せるやり方でした。闘牛場を表したり、ジプシー(ロマ)の集まりを表すなどのやり方です。
主たる役では、やはり手足の長い上野水香さんの存在感、妖艶というより自由でピュアな印象でした。そして運命(牛)の存在。男性ダンサーも印象が若く、全体として重厚というより、運命・宿命に向けて軽やかに駆け抜けていくといった印象でした。オペラと比べてしまうと物足りなさもありましたが、よく考えられた作品と思いました。
最後に話は振付家のジョン・ノイマイヤーへ。彼は、1939年生まれ。アメリカ出身のバレエダンサーであり振付家ですが、特に1973年からのドイツ・ハンブルクバレエ団での芸術監督就任からは当バレエ団を世界的に有名なものに成長させました。
私は5~6年前だったか、ベルリンを中心とした個人旅行の際に、ハンブルクにも1泊してバレエを観てきました。その他の観光は、美術館、赤れんがの倉庫街、チリハウスなどを散策しました。
バレエは、ノイマイヤー版「ロメオとジュリエット」。勢いがあり、心理描写に優れた作品と感じました。マクミラン版とはかなり違いました。